第2回 「変身」(フランツ・カフカ)


 【あらすじ】

ある朝 目が覚めてみると、グレーゴル・ザムザは自分が巨大な一匹の虫に変わっていることに気づく。 その姿を見てグレーゴルの勤め先の社長は驚いて逃げていき、家族は嘆く。家族は、虫になったグレーゴルを恐れ あるいは疎んじながらも部屋を片付け食べ物を与える。

一家は、グレーゴルの収入で暮らしていたが、それをあてにすることが出来なくなって、 家の部屋を3人の紳士に間貸ししたり、父親が勤めに出たりするようになる。

グレーゴルは、虫になった当初は、部屋から絵や使いなれた家具を取り除かれることを嫌がるが、 実際取り除かれてみると巨大な虫になってしまった彼にはその方が好都合であることを知る。 また、食べ物も、観念的には普通の人間が食べるものを食べたいと欲するのだが、残飯を美味と感じたりするようになる。

虫になったグレーゴルは、他人の目に触れないようにされてきたが、ある日彼の妹グレーテが、 家族と3人の下宿人の前でバイオリンを弾いているところへ、その音色にひかれて出てきてしまい、大騒動となる。 家族は、グレーゴルが自分たちの意思を理解してくれないと嘆く。 翌日、グレーゴルは、飢え死にしているところを手伝いの女に発見される。

残された家族は、新たな気持ちで暮らしをやり直していこうと決意する。


  【話の要約】  

冒頭の有名な「寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっていた」という不条理は、一体何を意味するのだろうか?  

グレーゴルが虫に姿を変えたのを見て、彼の職場の社長は驚き、狼狽して逃げていくのに対し、家族は、驚くよりもただ強く嘆く、というところにまず着目したい。 「普通 逃げるだろ!」とツッコミを入れたくなるこの描写に、読者は違和感を覚えるのだ。この家族はまるで予期していた悲劇が起こった、かのように振舞っているのである。  

その後、話は、家族はグレーゴルを虫として扱い続け、グレーゴルは、人間らしく扱ってもらうべきだと考えている。 それでグレーゴルは絵や家具を置いたままにしてもらおうとし、食べ物も人間と同じものを望み、音楽を聞きたいと願う。しかし、それらは全てかなわない。 家族は、虫となったグレーゴルはもはやコミュニケーションを取ることが不可能だと信じこんでいるからである。そして家族が彼にしてやった世話が、実は彼に最も適したものだった。  

グレーゴルは、妹の即興のバイオリン演奏会に乱入した翌日の朝に死んでしまう。飢えて干からびて死んだ巨大な虫を前に、家族は平穏を得たかのようである。 (本来ならば、「死」こそが悲劇であるはずなのに!)しかも家族は、この後、それまでの生活を清算して、新たな生活に希望を見出している。  

グレーゴルは家族にとって、何ものだったのだろうか?  
彼が人のなりをしていれば、家族の役に立ったろうか?  

ある日 人間が虫に変身してしまったことは、不条理ではない。虫に変身した人間が、それまで通り人間として扱われたい、 と思うことが不条理なのである。そして、虫と人間との間で意思疎通が出来ない、あるいはしようとしないことが、この不条理を拡大しているのである。  



さて、この「変身」という小説は何か象徴するウラの意味があるのだろうか?  

ちょうどザムザ家は、第1次世界大戦に敗北し、多額の賠償金を支払わされるドイツ国を、虫が、ドイツ人の誇りや精神的基盤を暗示しているように思われてならないのだが、どうだろう。  

また、上の【あらすじ】内で、グレーゴルの父親、母親、妹のことをまとめて「家族」という書き方をしたが、この3人はグレーゴルに対する接し方がそれぞれ異なっている。  

厳しい父親は、厳格な典型的ドイツ人男性像に通じるだろう。

彼が投げた林檎が、グレーゴルに大怪我を負わせるが、ここでの林檎は、「人間の理性」を象徴して、その対極にある(と父親は思っている)虫であるところのグレーゴルをやっつける道具になっている。  

ひげ面の3人の下宿人は、戦勝国をイメージしたものなのだろうか?  



S浦さんは、介護に明るく、妹がグレーゴルを世話する感覚がリアルだと言っていたのが印象に残った。


  【会の様子と感想】  

今回は、この本の推薦者・Y井君が休んでしまった。風邪を引いてしまったのだ。彼は、芸術系の学部で学んでいて、 私は彼がこの本をどう読むのか知りたかったので、とても残念だ。  

読書会は、またまた、あんまり関係ない話をずいぶんしてしまった。 今回は「私の会社員時代」という話。ほんとうに、ざっくばらんな集いだ…  

この小説は、国語的読み取りが難しい上、暗示や象徴が意味するものが判然としない部分が大きいので、 話し合いにくいかな、と思っていたが、そういう面が少しあったかもしれない。  

けれども、みんなの意見を聞けたおかげで、自分で読んだだけよりも、とらえた物語の全体像がより明確になった。  

次回は、12月は、メンバーのひとりがずっと都合が悪いというので、 小説は1月に回して、12月は漫画でやってみようということになった。  

どんな会になることやら…


第1回 吉本ばなな 「キッチン」へ

第3回 岡崎京子 「Pink」「リバーズ・エッジ」 岩明均 「寄生獣」ヘ

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